VDA6.3は、自動車部品を生産する工場で行われる監査の1つです。
ドイツの自動車メーカー協会が推奨する監査の方法で、製品の設計から開発、工場での量産、納品後のアフターサービスまでの流れを具体的に監査されます。
特に、工場での量産に関して具体的に確認されるので、なかなかに大変です^^;
VDA6.3の枠組みについては、別の記事でも解説してますので、そちらから読んで頂けると、分かりやすくなると思います。

この記事では、「工場での量産」に焦点をあてた「VDA6.3のプロセス要素6:生産プロセス分析」について具体的に解説していきます。
- VDA6.3監査で、製造現場の対応をする人
- VDA6.3監査をこれから受ける人
現場監査では何を聞かれるの?
VDA6.3では、プロセス要素と呼ばれるものが7つあります。
P1 | ポテンシャル分析 |
---|---|
P2 | プロジェクトマネジメント |
P3 | 製品及びプロセス開発の計画 |
P4 | 製品及びプロセス開発の実施 |
P5 | サプライヤーマネジメント |
P6 | 生産プロセス分析 |
P7 | 顧客ケア、顧客満足、サービス |
その中で、製造現場に関わりが深いものが、P6の生産プロセス分析です。
そして、P6の中に6つの分類があります。
P6.1 | プロセスには、何が入るのか?(インプット) |
---|---|
P6.2 | 生産するための手段は、管理されているか? |
P6.3 | 生産するための人員は、確保されているか? |
P6.4 | 生産するための設備は、整備されているか? |
P6.5 | プロセスは、機能しているか? |
P6.6 | プロセスは、何を生み出すのか?(アウトプット) |
そして、その1つの分類の中に、さらに質問があります。(^^;
分類 | 質問の数 |
---|---|
P6.1 | 5 |
P6.2 | 5 |
P6.3 | 3 |
P6.4 | 5 |
P6.5 | 4 |
P6.6 | 4 |
合計 | 26 |
現場の質問事項だけで、26個あります^^;
P6.1~P6.6の各質問内容について、1つずつ説明していきます。
P6.1:インプット
P6.1は、製造現場へ何が入ってくるか、どう管理しているか、に関する質問です。P6.1.1~P6.1.5まで、5つの質問があります。
P6.1.1 | 開発から量産への落とし込みは、スムーズに行われているか? |
---|---|
P6.1.2 | 入荷した材料は、受入れ確認して、正しい場所に保管されているか? |
先入れ先出しされているか? | |
不要な材料の処置を決めているか? | |
P6.1.3 | 入荷材料の保管場所は、整理・整頓・清潔ができてるか? |
P6.1.4 | 入荷材料は識別されていて、間違わずに使える環境になってるか? |
P6.1.5 | 材料を変更する場合は、承認をとる仕組みがあるか? |
先入れ先出しは、材料を使うときに、古いものから順番に使いましょう。という考え方です。
コンビニのお弁当だと、新しい日付のものを選びそうですが、そうすると期限切れのものが発生しやすくなるので、意識して古い日付の材料を使います。
FIFO(First In First Out)とも呼ばれます。
P6.1は、製造現場に入荷してくる材料の管理に焦点をおいた質問です。現場の監査だと、材料を保管しているエリア・倉庫を実際に見られます。
普段、なかなか見せることがないエリアだと思いますので、お客様に見せれる環境にしとく必要があります^^;
P6.2:手段・方法の管理
P6.2は、製品を作る方法や手段が、どうやって管理されているか?を確認します。P6.2.1~P6.2.5まで、5つの質問があります。
P6.2.1 | コントロールプランはあって、その通り実施されてるか? |
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P6.2.2 | 生産を途中で止めた場合、再開するときの方法が決められてるか? |
P6.2.3 | 特殊特性は決められているか?その項目は統計的に管理されてるか? |
P6.2.4 | 不良品や修正品は識別して、保管しているか? |
P6.2.5 | 材料や製品が、混入しない現場になってるか? |
特殊特性は、製品を作る上で、最も重要な管理するべき項目のことです。
車で例えると、エンジンやブレーキなど、故障すると取り返しが付かなくなるものです。故障する前に異常を検知することが求められるので、統計的な管理(SPC)も要求されます。
SPCについては、別の記事でも解説してますので、興味のある方は読んで頂けると嬉しいです^^

コントロールプランについても、別の記事で解説してます^^

P6.2は、現場の管理が、コントロールプラン通りに行われているか?が確認されます。コントロールプランを見ながら、監査されるのが一般的です。
P6.3:人員の確保
P6.3は、製品を作る人についての質問です。P6.3.1~P6.3.3まで、3つあります。
P6.3.1 | 作業者は、きちんと作業ができるか? |
---|---|
P6.3.2 | 役割と責任が、明確になっているか? |
P6.3.3 | 生産するための人数は、十分足りているか? |
作業者が、作業するための資格を持っているか?を確認されます。力量評価や、認定するための制度を説明する必要があります。
力量評価については、別の記事で解説してますので、リンクを貼っておきます^^

P6.4:設備の管理
P6.4は、製品を作る設備に関する質問です。工場の環境を管理する設備(インフラ)も含まれます。
P6.4.1~P6.4.5まで、5つあります。
P6.4.1 | 顧客の要求を満たす装置を使っているか? |
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工程能力(Cpk)が最低でも1.33以上が必要 | |
P6.4.2 | 保全活動は行われているか? |
P6.4.3 | 試験設備や測定機器は、校正されているか? |
P6.4.4 | 作業エリアは、清潔に保たれているか? |
作業者や製品の流れを考えたレイアウトになってるか? | |
P6.4.5 | 設備や治工具は、きちんと管理・保管されているか? |
ここで出てくる工程能力や校正(MSA)についても、別の記事で解説してますので、よろしければ合わせて読んでもらえると嬉しいです^^


P6.5:プロセスの機能
P6.5は、製造プロセスが効率的に機能しているか?を確認します。
効率的な機能とは、
- 組織に目標があって、それを達成できているか?
- もし、達成してない場合は、何かアクションが取られているか?
といった仕組みがまわっているか、です。
P6.5.1~P6.5.4まであります^^;
P6.5.1 | 製造プロセスに目標は設定されているか? |
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目標に対する実績が確認されているか? | |
P6.5.2 | 改善するためにデータが収集、分析されているか? |
P6.5.3 | クレームが発生した場合、原因が分析されて、対策されているか? |
P6.5.4 | 内部監査は行われているか? |
ここに出てくる目標設定、内部監査についても、解説した記事がありますので、リンクを貼っておきます (リンクだらけで、すいません^^;)


P6.6:アウトプット
製品をお客様に出荷・納品することに関する質問です。
P6.6.1~P6.6.4まであります。
P6.6.1 | 出荷する数量、輸送の方法は決められているか? |
---|---|
P6.6.2 | 出荷する製品は、きちんと保管されているか? |
P6.6.3 | 出荷する製品の製造記録は管理されているか? |
P6.6.4 | 顧客要求を満たした製品だけを出荷しているか? |
まとめ
P6.1:インプット
- 製品に使う材料をどうやって管理しているか?
P6.2:手段・方法の管理
- 製品を作る方法は、どうやって管理されているか?
P6.3:人員の確保
- 製品を作る人は十分確保されていて、資格を持っているか?
P6.4:設備の管理
- 製品を作る設備は、メンテナンスされているか?
P6.5:プロセスの機能
- 目標を持って、活動しているか?
P6.6:アウトプット
- 品質が保たれた製品を出荷しているか?
製造現場で確認される内容だけでも、いっぱいです。途中、別の記事へのリンクを多く貼りましたが、それだけ聞かれる内容も多岐に渡って、深いことを意味してます。
全てを理解することは、ちょっと難しいかも知れません^^;
もし、実際にVDA6.3監査を受けるときに、参考資料にでも見て頂ければと思います^^
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。m(_ _)m