製品や商品を製造していると、長さや重さを測る(量る)ことは大切です。決められた長さや重さになっていないと不良品になってしまう。。
不良品を作らないために日々努力してても、測定する機械が壊れてたら、元も子もありません^^;
ISO/IATF16949の審査を受ける場合も、MSA(計測システム解析)は必ず確認されます。(MSAは、Measurement System Analysisの頭文字の略称)
なかなか馴染みのない言葉ですが、この記事ではMSAの具体的な内容を解説します。
MSAで使用する計算式や判定方法の説明は、かなり複雑で難しくなります。ここでは初心者の方に向けて、MSAの考え方に重点をおいた説明をしますので、ご了承下さい。
- MSAの専用ツールを使っているけど、あまり理解できていない人
- 計測管理のプロセスに携わって間もない人
解説を動画でみたい人はこちら
MSA(計測システム解析)って何?
コンビニでポテチを買おうとすると、袋にポテチの重さが表示されていると思います。
もし、80gって表示してるのに実際の重さが70gだったら・・・当然、怒りますよね(^^;;
メーカーさんも商品の重さを、きちんと量(はか)って出荷してますので、重さが違うことはまずありません。
でもメーカーさんで使っている計測器が、壊れていたら? 目盛りが少しずれていたら? どうでしょう。
測定器では80gと表示されているのに実際は75gしかない。
測定器に5gの誤差があったら、5g少ない商品が出荷されてしまいます。
きちんと重さを計測できているかを証明することで、安心してポテチが出荷できます。
測定器の誤差や作業者のバラツキを全て考えて、大丈夫なことを検証することがMSA(計測システム解析)です。
きちんと計測できているかを証明する方法
測定器の誤差がないことや、測定者にバラツキがないことを証明する方法は、5つ決められた考え方があります。
5つの方法で検証した結果が全て合格であれば、きちんと計測できていることになります。
- 偏り
- 安定性
- 直線性
- 繰返性
- 再現性
これって校正と何が違うの?
校正との違い
計測器の証明であれば、校正で良いのでは?と思う人がいると思います。
間違っていませんが、校正はMSAの中の1つになります。
紹介した5つの検証方法の中で、①偏り、②安定性、③直線性をまとめて、校正と呼ばれています。
校正だと、測定する人(測定者)のバラツキを考えていないため、十分ではないと思われています。
測定者のバラツキを検証するのが、④繰返性と⑤再現性です。④と⑤をあわせてGageR&Rと呼ばれることがあります。(GageR&Rはあとで説明します^^)
測定器の分解能
分解能は、単位のこまかさを意味します。
仮に80gの重さをはかる場合、最小単位の1つ下まで読み取れる測定器が必要です。
測定器の表示が、80.0g(小数点第1位まで)まであるものです。80gまでの表示だと正確性に欠けると判断されます。
個人的には、最小単位の2つ下まで読み取れる測定器をおすすめします。(80.00gと表示されるもの)
0.1g単位の場合、実際測定すると「79.9ー80.0ー80.1」の間で表示の動きがとまらない(安定しない)ことがよくあります。
体重計にのって、数値が安定しない経験したことありますよね。あんな感じです。測定器を選ぶ場合は、少し検討してみて下さい^^
偏りってなに?
偏りは、基準となるものを測定した結果、基準値とのずれを指します。
例えば、80gの分銅(=基準値)を、1人の測定者(Aさん)が、5回測定した結果で判断します。
80gの分銅を5回測定した結果
測定回数 | 測定結果(g) |
---|---|
1回目 | 80.0 |
2回目 | 80.1 |
3回目 | 79.9 |
4回目 | 80.0 |
5回目 | 80.1 |
基準となる80.0gに対して、どの程度バラツキがあるかで、合格 or 不合格を判定します。
安定性ってなに?
安定性は、偏りに時間の要素を加えたものになります。
例えば、80gの分銅をAさんが5回測定して、同じことを5日間行います。
時間的なバラツキがないか=安定しているか?を判断します。
1日ごとの測定結果
回数 | 6月1日 | 6月2日 | 6月3日 | 6月4日 | 6月5日 |
---|---|---|---|---|---|
1回目 | 80.0 | 80.1 | 80.0 | 79.9 | 80.1 |
2回目 | 80.1 | 80.0 | 80.1 | 80.0 | 79.9 |
3回目 | 79.9 | 80.0 | 79.9 | 80.0 | 80.0 |
4回目 | 80.0 | 79.9 | 80.0 | 80.1 | 80.0 |
5回目 | 80.1 | 80.0 | 80.1 | 79.9 | 80.0 |
直線性ってなに?
直線性は、測定する範囲の中での偏りを見るものです。
普段、80gのポテチをはかる測定器であれば、40g、60g、80g、100g、120gの分銅を使って偏りの測定を行います。
それぞれの重さで偏りに問題がなければ、合格になります。
各分銅での測定結果
回数 | 40g | 60g | 80g | 100g | 120g |
---|---|---|---|---|---|
1回目 | 40.1 | 60.0 | 80.0 | 100.0 | 120.0 |
2回目 | 40.0 | 60.0 | 80.1 | 100.1 | 119.9 |
3回目 | 40.0 | 59.9 | 79.9 | 100.1 | 120.0 |
4回目 | 39.9 | 60.0 | 80.0 | 100.0 | 120.1 |
5回目 | 40.0 | 60.1 | 80.1 | 100.0 | 120.0 |
繰返性ってなに?
繰返性は、1人の測定者(Aさん)が1つの商品を使って、複数回測定した結果のバラツキになります。
例えば、同じポテチをAさんが5回測定して、その結果から判断します。偏りとの違いは、基準のもの=分銅ではなく、実際の商品を使用する点です。
ポテチを5回測定した結果
測定回数 | 測定結果(g) |
---|---|
1回目 | 80.0 |
2回目 | 80.1 |
3回目 | 80.2 |
4回目 | 80.0 |
5回目 | 80.1 |
再現性ってなに?
再現性は、繰返性に測定する人の要素を加えたものです。
Aさんの他に測定するBさん、Cさんの測定結果から判断します。
3名が5回測定した結果
回数 | Aさん | Bさん | Cさん |
---|---|---|---|
1回目 | 80.0 | 80.0 | 80.1 |
2回目 | 80.1 | 80.0 | 80.0 |
3回目 | 80.2 | 80.1 | 80.0 |
4回目 | 80.0 | 80.0 | 80.0 |
5回目 | 80.1 | 80.1 | 80.2 |
GageR&Rってなに?
MSAにたずさわっているとGageR&Rという言葉がでてきます。
R&Rは、繰返性(Repeatability)と再現性(Reproducibility)の頭文字をとったものです。ただ、さきほど説明した繰返性、再現性と少し違う点があります。
GageR&Rの具体的な例を出すと「3名の測定者が、10個の商品を5回測定した結果」になります。
これまで商品は1つでしたが、商品自体のバラツキも入れて、検証することになります。
より実践的な検証方法になりますので、MSAの繰返性と再現性を表す方法として、GageR&Rの手法を使うことが一般的になってきています。
MSA(計測システム解析)のまとめ
MSA(計測システム解析)は、現場で使用する計測器の確からしさ、測定する人の正確性を検証する手法になります。
5つを検証することで、現場の計測システムが問題ないことが証明できます。
- 偏り:基準値と測定結果のズレ
- 安定性:偏りの時間経過をみる
- 直線性:測定範囲内で偏りをみる
- 繰返性:実際の商品と測定結果のズレ
- 再現性:測定者のバラツキをみる
MSAは、時間のかかる面倒な作業ですが、現場を支える大切な考え方です。
実際の計算は、Excelなど数値を入力すれば合格、不合格を判定してくれるツールもあります。考え方を理解して、うまくツールを活用して頂ければと思います。
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よろしくお願いします。<(_ _)>
見て頂いている方の理解に繋がれが嬉しいです。
最後までお付き合い、ありがとうございました。m(_ _)m