品質管理に近い仕事をしていると「QC7つ道具」という言葉に出会います。昔からある現場を管理・改善するツールです。
しかし、僕は20年間現場で働いてきましたが、QC7つ道具を意識して使ったことはありません。普段の仕事に溶け込んでいるものや、まったく使えないものもあります。
QC検定試験にも出題される重要な考え方ですが、現場で実践するときには、もう少し深掘りして使う必要があると思っています。
この記事では、僕の経験則から現場での具体的な使い方について紹介していきます。
- これから現場の品質管理業務にたずさわっていく人
- 現場の品質管理を1~2年担当している人
- パレート図
- ヒストグラム
- 特性要因図
- チェックシート
- 管理図
- 散布図
- グラフ
- 層別
全部で8個ありますが、層別は後から追加されたようです。層別以外は、図や表などのツールですが、層別は考え方になります。
QC7つ道具が今の現場で使えるか?
僕の経験では、QC7つ道具は少し考え方・使い方が変化してると思います。Excelや分析ツールの発達で、昔よりも簡単にデータは解析できるようになりました。
パレート図という言葉は知らなくても、Excelのグラフで棒グラフを大きい順番に並べることは少しExcelを触ったことがある人だと簡単にできます。
大切なことは、パレート図という形にこだわることことではなく、改善の順番を分かりやすくする考え方だと思います。
QC7つ道具を今の現場で使ってるか見ていくと

上から3つは使わない道具になってます。
では、今はどんな使い方をしてるのか具体的に説明していこうと思います。
QC7つ道具の説明を分かりやすく!?するために、いちごを考えてみます。収穫した20個のいちごに、大きさ・見た目・甘さのデータを付けました。このデータで7つ道具を使ってみます。

パレート図の実践
パレート図の目的は、不具合の改善を行う場合、どこから攻めていくかを判断する材料に使います。
いちごの不具合を考えると「出荷できないもの=キズがある、色が白い、小さい、甘くない」になります。20個のデータでいくつかのグラフを作ってみます。

Excelで不具合の表に割合を入れて、棒グラフ+折れ線グラフを作っただけです。これをパレート図と意識して作っている人の方が少ないかも知れません。
本当のパレート図の形は少し違いますが、実務に支障はありません。逆にパレート図の方が見にくかったりします。

場合によっては、円グラフの方が分かりやすいときもあります。
大切なことはパレート図の様式にこだわらず、どの不具合モードが多いのか?という目的を達成することです。
パレート図を使うことに意味はありませんので、考え方をしっかり理解していればOKです。
ヒストグラムの実践
ヒストグラムは、何が何個あるか?をグラフ化したものです。いちごの大きさを基準に、何cmのものが、何個あるかを調べてみます。

5cmのいちごが6個と全体の30%を占めて1番多いことが分かります。昔はそれぞれの大きさに何個あるかの集計に時間が掛かりましたが、今はExcelのピボットテーブルで簡単に表にしてくれます。その表を棒グラフにして完成です。
もう1つ、いちごの甘さを基準にグラフを作ってみます。

糖度13(結構甘い)が1番多いですが、糖度12~15に大きな差はなくて、全体の75%を占めていることが分かります。
ヒストグラムの目的は、データがどんな分布をしているかを把握することにあります。Excelで表を作って、棒グラフにすることで、十分目的は達成されます。ヒストグラムという難しい言葉は知らなくても、何気なく使っていると思います。
特性要因図の実践
特性要因図は、問題が発生した場合の原因究明に使うツールですが、僕は好きではありません。(^ ^;;
すごく使いずらいです。魚の骨に見立てて、大きな骨・中位の骨・小骨と枝分かれして要因を書き出して行きます。
しかし、重要な小骨がいくほど、小さく書くことになるので、自分が何をしているか分からなくなってきます。

「いちごが白い」という問題に対して、何で白いんだろう?の原因を探るため、魚の骨を書いてみました。骨を書くだけで用紙いっぱいで、文字を書き込む気になりませんよね。
これに変わる有効的な手段は、FTA(Fault Tree Analysis=故障の木解析)になります。FTAの使い方は別の記事で書いていますので、そちらを参考にして下さい。

チェックシートの実践
現場で使うチェックシートは大きく2種類あります。「記録用のチェックシート」と「点検用のチェックシート」です。
記録用のチェックシート
何かを測定した結果や検査した結果を記入するチェックシートです。これも立派なチェックシートです。

でも、実際使おうとすると少し情報が足りませんので、少し工夫して

ポイントは測定・検査した結果を記入することで、良いものか悪いものかを判定できるようにする点です。
また記録として残すので、後から調べることができるように検査する人や日付が分かるようにすることも大切です。
点検用のチェックシート
あらかじめ行うことが決めていて、その通り実施したかを記録するチェックシートです。主に設備の点検や日常の清掃に使用します。簡単な例ですが、こんな感じです。

ポイントは、内容の欄を具体的にすることです。誰が、どこを・何を使って・何をする、など書いていることをするだけで良いよう作ります。
管理図の実践
管理図は、現場目線で見ると折れ線グラフの1つと思って大丈夫です。いちごの大きさを1個目から順番に20個目まで折れ線グラフを書いてみます。

ここに大きさの規格を入れます。小さくても美味しくないですし、大きくても大味になりますよね。美味しいいちごを届けるために、3~8cmの大きさだけを出荷することにします。

13個目のいちごが小さくて出荷してはダメなことが分かります。チェックシートに記録した測定結果をグラフで視覚化することで、分かりやすくしたものが管理図になります。上下の赤い線を「管理線」と呼びます。
2個目や6個目が線の上に点があります。オンラインと呼びますが、その会社で取り決めがなければ、一般的にオンラインは合格(OK)で問題ありません。
最近は、この管理線の数字に過去のデータから統計的に計算したものを使う管理図が浸透してきています。SPCと呼ばれる管理図で、工程能力の考え方を使った3σ管理が有効です。
少し難しい話になりますが、興味がある方は別記事に分かりやすく解説していますので、そちらを参考にして下さい。

散布図の実践
散布図は、2つの要素を同時にグラフ上に表すことで、その関係性を理解するのに役立ちます。いちごの大きさと甘さに関係があるか見てみましょう。

何となく小さいいちごの甘さが低い気がしませんか。4~5cmが1番甘くて、それ以上大きくなってもあまり変わりませんね。
この結果だと、3cmになると甘さ(糖度)が10を下回ります。安定して甘いいちごを出荷するなら、大きさの規格を3→4cmに引き上げる必要がありそうです。
ポイントは2つ要素にどんな関係性があるかを見極めることです。
点の集合体を遠くから見て、線や曲線が引ければ何かしらの関係があると考えられます。関係性があれば、更にそこから深く調査するヒントになります。
散布図は、現場の管理で使うよりも改善や原因究明に広く使われています。
グラフの実践
グラフは、QC7つ道具のベースになっています。
これまでのパレート図・ヒストグラム・管理図・散布図は、今では全て棒グラフ・円グラフ・折れ線グラフ・散布図といったグラフに集約されています。
Excelというソフトが広く使われるようになって、QC7つ道具の使われ方は大きく変化したと思っています。
層別の実践
層別は、不具合が発生した場合の原因究明の手段として使われます。
QC7つ道具に特性要因図がありますが、その大骨・中骨になる項目1つ1つが階層(1段ずつ下におりていくイメージ)になります。大骨には、常に5M1Eを当てはめて考えれば大丈夫です。

まとめ
QC7つ道具は、そのままでは使いずらい面がありますが、考え方は非常に参考になります。Excelを上手に活用して、現場管理・現場改善に役立てましょう!
どの不具合が1番多いのかを知ることが目的です。Excelの棒グラフ・円グラフを活用しましょう。
データがどんな分布をしているか把握することが目的です。Excelの棒グラフを活用しましょう。
不具合の原因究明に層別で深掘りしていくツールです。実践ではFTAを使いましょう。
現場の人がチェックシートに書かれていることをするだけで良いように作りましょう。
管理線に3σ管理を適用することが求められています。SPCを理解して昇格させましょう。
2つの要素に関係性があるかを視覚化できます。点に線や曲線を引いてみましょう。
今ではQC7つ道具のベースになっています。それぞれのグラフを使いこなしましょう。
不具合が発生した原因を追求していく考え方です。5M1Eを切り口に1つ1つ細分化していきましょう。
本記事は以上となります。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました^^