製造の現場で、品質事故やクレームを受け付けたときに原因を究明する手法にFTA(Fault Tree Analysis)があります。
日本語にすると「故障の木解析」
クレームの報告書で、原因調査の説明として、このFTAやフィッシュボーンはよく使われます。
でも、ネット検索しても現場で使えそうなFTAの具体的なやり方は、あんまりありません。
- FTAって、どうやるの?
- 何から書けばいいの?
- 使い方がよくわかんないんだけど・・・
この記事では、そんな疑問に答えていきます^^
製造現場で25年ほど品質管理の仕事をしてきました。理論的な考え方より、現場で使ってきた実践的な考え方を紹介します。
それは本来の考え方・使い方じゃないよ!って箇所もあるかも知れません。
でも、ツールはあくまで手法なので、目的にたどり着ければOKだと思ってます。<(_ _)>
- クレームの報告書をよく作成する人
- FTAをこれから使おうと思っている人
- FTAを使っているけど、どうもしっくりこない人
FTAの考え方

FTAは、何かトラブルが発生したことを起点にスタートします。似たものに特性要因図(フィッシュボーン)がありますが、考え方は同じで見た目が違うだけと思って問題ありません。
僕も最初から特性要因図で原因究明をしたことがありません。FTAを理解していれば、特性要因図は形を変えるだけなので、気にする必要はないです。
海外のメーカーはフィッシュボーンが好きで、日本のメーカーはFTAが好きな気がします。海外のレポートにフィッシュボーンが必要で、書き換えたことが何度かあります。文化の違いかも知れません(^^;;
FMEAとの違い
車の部品を扱っていると、FMEAという言葉がよくでてきます。
FMEAは、トラブルが起きる前に事前にリスクがないかを解析するツールです。もし、十分なFMEAを作成できていれば、FTAを考える必要はありません。
「FTAをする」ということは「トラブルが起こった」ことになるので、FMEAが十分でなかった!もしくは、FMEAでリスクが高いことはあらかじめ分かっていた!ことを意味します。
僕は、FMEAが最も現場管理に使えるツールだと考えています。FMEAを既に作成しているのであれば、FTAを行う前にFMEAを確認してみて下さい。
FTAとFMEAにはアプローチする順番が違うだけで、密接な関係があります
FTAのフォーマット
フォーマットは、Excelで作るのが使いやすいです。一般的なフォーマットはこんな感じです。
分類1には、5M1Eをベースにした言葉を入れればOKです。FTAは、分類2にどれだけの要因を書き出せるかがポイントです。
FTAの進め方
FTAの進め方は、7つのステップで行います。
- FTAチーム・リーダーの選定
- トラブルの原因なりそうな項目を思いつく限り並べる
- 抽出した要因を調査する
- 1次判定する
- 再現実験を行う
- 原因の特定
- どれも再現しない
それぞれ説明します。
①FTAチーム・リーダーの選定
トラブルが発生した場合、問題解決のチームを作ります。
メンバーは、会社組織の各部署から経験のある人を選定しましょう。その分野にどれだけ多くの知識を持っているかが大切です。
リーダーがいないと、意思決定に時間がかかって、間違った方向に進んでしまうことがあります。経験豊富なリーダがいるとすんなり進んでいきます^^
②トラブルの原因なりそうな項目を思いつく限り並べる
フォーマットの分類2の欄です。
「これは大丈夫だろう!」という考えは一旦やめて、少しでも原因に関係しそうなものは書き出します。
「人」の部分は現場に詳しい人、「装置」の部分は機械に詳しい人みたいに役割を分担するとスムーズです。
最終的にはメンバー全員でレビューしますので、思いつくまま全てあげましょう。
③抽出した要因を調査する
1つの要因に対して、客観的な証拠になるデータを調査します。
調査結果は、数値や記録と具体的なものが必要です。人の証言や想像だと要因を消せる証拠にはならないので注意します。
④1次判定する
トラブルの原因ではないという具体的な証拠がある場合に「◯」を入れます。
例えば「規格10±2cmに対して、調査結果10.5cmだったので問題なし」などです。
証拠が不十分だったり、NGだった項目が対象(×)として残します。
⑤再現実験を行う
可能性が残った項目(×)に対して、再現させて、同じトラブルが発生するか検証します。
再現しなければ、原因じゃない可能性がでてきます。
⑥原因の特定
同じトラブルが再現すれば、その項目が原因で間違いありません。対策に移りましょう!
⑦どれも再現しない!?
まれに再現しないこともあります。
その場合、大半は「分類2」の抽出不足です。もう1度、原因の洗い出しに戻ってしまいます・・・、うーん、大変^^;
原因にたどり着けない場合の対処法

どうやってもトラブルが再現せずに息詰まることがあるかも知れません。
その場合、時間はかかりますが、現場レベルでのFMEA作成が結果的に近道です。
既にFMEAがある場合は、FMEAを持って現場作業を1つ1つチェックしていく作業をします。FMEAに抜けや漏れが必ずあるはずです。

FMEAに反映
トラブルの要因・対策内容は、全てFMEAに反映します。
トラブルの対策が、発生対策なのか?流出対策なのか?色々な改善施策があると思います。FMEAはその全てを網羅することができます。
FMEAはトラブルを積み上げることで精度があがり、会社の財産になります。今回のトラブルを教材して、FMEAを見直すことで再発を予防できます。
本記事は以上となります。最後までお付き合い、ありがとうございました。
それでは、またっ!m(_ _)m