ISO9001やIATF16949の審査を受けると、従業員の力量は必ず確認される項目になってます。
力量って普段の生活だと馴染みのない言葉ですが、「スキル」や「能力」のことだと思ってもらって大丈夫です。
自動車で考えると、運転技術やドライビングテクニックですね。
品質を維持するために、ちゃんと技術をもった人が作業して下さいね
っていうのが、ISOやIATFが求めていることです。実際、ISO9001に何が書かれているかというと(2020年時点)
- 7.2 力量
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組織は、次の事項を行わなければならない。
- 品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に影響を与える業務をその管理下で行う人(又は人々)に必要な力量を明確にする。
- 適切な教育、訓練又は経験に基づいて、それらの人々が力量を備えていることを確実にする。
- 該当する場合には、必ず必要な力量を身につけるための処置をとり、とった処置の有効性を評価する。
- 力量の証拠として、適切な文書化した情報を保持する。
うーん、、ちょっと何言っているか分からないなぁ
日本語って難しいですよね(^^;
この記事では、この要求事項に対して、具体的に何をすれば良いのかを解説していきます。
この記事を読んで頂ければ、ISO9001、IATF16949の審査を簡単に乗り越えることができます^^
- これからISO9001やIATF16949の審査を受ける人
- 作業者の教育方法を具体的に知りたい人
力量評価って、なに?
力量評価は、「その人がもっているスキルや能力を客観的に評価すること」です。
その具体的な方法が、ISO9001の公式文書の「7.2 力量の1~4」ですが、もう少しわかりやすい日本語にすると
- 上司の人は、部下の人が仕事をするために必要な力をはっきりさせましょう。
- 部下の人には、教育や経験をつませて、力を身につけさせましょう。
- 教育や経験をつませた後は、ちゃんと力が身についたか確認しましょう。
- 必要な力を経験させて、確認したことは記録しましょう。
- ①~④の内容は、文書にして、誰でも同じことができるようにしましょう。
こんな感じになります。
これを車の運転に例えると、もう少しわかりやすくなります。
- 必要な力=ハンドル操作、アクセルとブレーキの踏み方、交通ルールの理解
- 教育と経験=教習所での練習、運転教本の座学
- 力の確認=運転試験(実技と筆記)の合格
- 記録=教習所での受講記録や試験の合格書(運転免許書)
- 文書=法律に書かれてること
運転するための知識を得て、技術を学んで、試験に合格する。そして、定期的に免許の更新を行う。
この一連の流れが「力量評価」です。
運転免許証をもってない人が運転すると事故が起こります。同じように、免許証をもってない人が作業をすると、トラブルが発生します。
トラブルを防止するために、「この人のスキルは、どの程度あるんだろうか?」をはっきりさせることが力量評価の目的です。
一般的に力量の評価は、5段階にわけることができます。
レベル | スキル | 車だと |
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レベル1 | 初心者(新人さん) → 1人で作業してはダメ | 仮免での路上運転 |
レベル2 | 簡単な作業はOK | 初心者マークで運転 |
レベル3 | 普通の作業までOK | 一般ドライバー |
レベル4 | 難しい作業をしても良い | 大型車や特殊車両も運転OK |
レベル5 | みんなに教えることができます | 教習所の先生 |
レベル2の人は、大型車や特殊車両を運転することができません。運転するには、さらに教育を受けて、練習して、専用の免許をもらう必要があります。
力量評価とは?
- 今の自分の力を知って、自分に不足している力を補っていく。
- そして、自分をレベルアップさせていくこと一連の流れを言います。
- 個人、1人1人に評価を行っていきます。
具体的に何をすれば良いの?
力量評価をスムーズに行うためには、6つのモノを準備します。
- 仕事に必要なスキルの箇条書き
- 必要なスキルに対して、今の実力
- 目指すべきスキルのレベル
- 教育の計画
- 教育を実施した記録
- 教育した後の実力
①~⑥までをまとめて、「力量評価シート」というものを準備しておくと便利です。
お寿司屋さんでの修行をイメージすると、力量評価シートはこんな感じになります。
お寿司屋さんでの仕事
力量シートの①〜⑧を、それぞれの解説します。
スキルの内容を分かりやすくするためのものです。ここでは、実際に体を動かして覚える「実技」と、教科書や本、テキストを使って学ぶ「学科」に分けました。
わけ方は、お好みです^^
仕事をする上で必要になるスキルの箇条書きです。
作業を1つ1つステップごとに書き出します。1つのステップは、細かくなり過ぎず、大枠にならない「ひとくくり」にします。
そうすることで、その人のスキル状況が把握できます。
- どこまで教えたか?
- どこまで知識があるか?
- どの作業を任せることができるのか?
ひと目でわかるようになります。
この欄に、ここまでは成長して欲しい、実力をつけて欲しいという目標のスキルレベルを記入します。このスキルレベルを目指して、努力していきます。
自分が考える今の実力を入れる欄です。要求される実力とのへだたりを意識します。
もし、求められる実力と今の実力が同じであれば、そのスキルに関しては、スキルアップの必要はないことを意味します。
その場合は、特に教育する必要はなくなり、⑤~⑧はしなくてよくなります。
スキルアップするために行う具体的な教育プランです。
教育の方法は、先輩が身振り手振りで教えて、実践するOJTが一般的だと思います。OJTは、オン・ジョブ・トレーニングの略語(On-the-Job-Training)
OJTの詳しい内容は、こちらで解説してます。
教育する日付や期間をあらかじめ設定しておきます。
①~⑥までは、力量評価シートを作成したときに記入します。
後は、力量評価シートで計画した通りの教育を行って、教育終了後にスキルアップできたかを確認します。
一般的には、1年単位で力量評価シートが作成されています。1月にたてた目標を、12月に振り返るようなイメージです。
実際に教育を行った日や期間を記入する欄です。「ちゃんと教育したか?」の記録(エビデンス)になります。
1年間を通してスキルアップに努めた成果があるか?を評価します。上司の人から見た実力評価になります。
思ったように伸びなければ、また来年、スキルアップ計画を作るような使い方をします。
もし、全ての要求をクリアできていれば、翌年はさらなるステップ「わさびをつける」や「寿司ネタをのせる」といった作業の習得に移行します。
まとめ:スキルをわかりやすくするもの
- 力量評価って、なに?
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- 力量評価は、これまで先輩の作業を目で見て覚える(盗む)といったものを、数字を使って、誰もが見えるようにしたものです
- 力量を見える化することで
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- 自分に不足しているスキルは何か?
- なんの勉強をすれば良いのか?
- どこまで習得できたのか?
その人の持ってるスキル、能力がわかりやすくなります。
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ISO9001やIATF16949の審査では、必ず確認される大切な考え方です。
力量評価を使うことで、作業者の知識不足や経験不足、実力不足でのトラブルを防止することでできます。
日本の企業では、まだ浸透していない(実際に活用できていない)ものかも知れませんが、使いこなせれば有効なツールです。
力量評価に関する知識の参考になったらうれしいです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。m(_ _)m