この記事をご覧の方は、クリーンルームで仕事をしている人か、これからクリーンルームで働こうとしている人かも知れません。
なかなか馴染みのないクリーンルームですが、クリーンルームで製品や作業をしている工場は結構あります。名前の通りキレイな部屋(空間)が必要な場所ですね。^^
・半導体 ・食品 ・医療機器 ・病院(手術室)
僕も今の会社で働くまで、クリーンルームの存在自体を知りませんでした。知らない人にとっては、どうして良いか分からない、ちょっとコワイ世界だと思います。
この記事では、クリーンルームの入り方から、気をつけるポイント、どんな管理をすれば良いかを紹介します。
- クリーンルームでこれから仕事をする人
- クリーンルームでの仕事に少し興味がある人
クリーンルームって、どんなとこ?
クリーンルームは、人が普段生活している場所より塵(ちり)をどんどん少なくすると出来上がります。「ゴミ」ではなく、「塵(ちり)」という言葉を使った訳は、人の目に見えない大きさのゴミだからです。
一般的には、1つの塵の大きさが0.5umのものを指します。ちょっと呼びにくいので、これからはダストと書きます。
「um」は、ミクロンやマイクロメーターと呼ばれる単位です。1mm=1,000umですので、0.5umは、0.5mmのシャープペンの芯を1,000に分割した大きさになります・・・見えませんよね。
クリーンルームにもキレイな度合いによってランクがあります。
ISO規格だと8段階、アメリカの標準的な規格(FED規格)だと6段階です。2つあってややこしいですが、どちらも良く聞きますので、2つの規格を紹介します。
クラス | ダスト個数(0.5um/m3) |
1 | 0個 |
2 | 4個 |
3 | 35個 |
4 | 352個 |
5 | 3,520個 |
6 | 35,200個 |
7 | 352,000個 |
8 | 3,520,000個 |
クラス | ダスト個数(0.5um/cf) |
1 | 1個 |
10 | 10個 |
100 | 100個 |
1,000 | 1,000個 |
10,000 | 10,000個 |
100,000 | 100,000個 |
製品や作業の内容で必要とされるクラスは違ってきます。ISO規格のクラス1や2だとダスト1つあってはダメな空間ですので、テレビに出てくる宇宙服のようなものを着て作業するようになります。人が発する息さえもダストになることがあります。
食品工場や精密部品を組立てる工場だと、ISO規格のクラス6~8が一般的だと思います。この場合でも、クリーンスーツ(防塵着とも言います)を着て作業する必要があります。
クリーンスーツは、人が着ている衣服から出るダスト(繊維くずや皮膚、汗などの)を防止する効果があります。
スーツの他にマスク・フード・手袋・クリーンルーム専用のブーツも着用する必要があります。クリーンルームとは、ダストが少ない空間を作るために、色々な工夫がされた部屋になります。
ダストを少ない部屋にする工夫
ダストの個数を減らすために、クリーンルームには色々な仕掛けと管理が行われています。その代表的なものを紹介します。
クリーンルームの構造設計
クリーンルームは、普通の部屋(一般室とも言います)から汚い空気が入ってくることを防止するため、壁やパーテーションで区切られています。その上で、天井にキレイな空気を部屋に入れるフィルターが付いています。

大気をフィルターを通して部屋に入れ続けることで、クリーンルームは常にキレイな空気で満たされます。でも、クリーンルームの中では、製品を作るために装置が動いていたり、人が作業しています。
そうすると、クリーンルームの空気はどんどん汚れてきます。汚れた空気を出すために、クリーンルームには空気の排出口があります。(リターンと呼ばれることもあります)
一般的に壁にリターンがあるタイプと、床が網になっているタイプがあります。床が網になっているタイプの方が、クリーン度が高い仕様になります。(グレーチング構造と言います)
クリーンルームへの入室方法
クリーンルームは、一般室と壁があるため、専用の入口から入ります。ISO規格でClass6~8であれば、上の写真のようなクリーンスーツを着用します。クリーンスーツを着て、クリーンルームにたどり着くまではいくつかの手順を踏みます。
- 普通の服の上着を脱ぐ(Tシャツ・ポロシャツ・Yシャツになる)
- クリーンスーツを着る部屋に入る
- クリーンスーツ・帽子・手袋を着用する
- クリーンルーム用の靴(ブーツ)を履く
- 水で手洗いを行う
- エアーシャワーを浴びる
- クリーンルームへ入る(やっと・・・)
クリーンルームへの持ち込み
空気をキレイに保つために、持ち込んではいけないものも多数あります。
・普通の紙 ・普通のノート ・鉛筆 ・シャープペン ・消しゴム ・ダンボール などなど
普段生活で使っているものは、基本的に持ち込んだらダメと思って良いです。少し迷うものを幾つか紹介します。
持込OKのところが多いと思いますが、クリーンルームの中には専用の時計があります。これは、作業時間などに個人の腕時計を使われると間違っていることがあるからです。持ち込んでも腕時計は見ないで!と言われるかも知れません。
ISO規格でClass6~8レベルであればOKのところが多いと思います。それより高いクリーン度が必要な場所は、ノーメイクをお願いされるかも知れません。これは、化粧品の粉が空気中に飛散する可能性があるからになります。
会社に居る間の禁煙をお願いされることはないと思います。ただ、高いクリーン度が必要な場所の場合、喫煙後20~30分経過してからクリーンルームに入室するように言われるかも知れません。実質、10分休憩だと喫煙できませんが・・・
これは、タバコの煙が皮膚や髪の毛に付着している状態のまま入室して、クリーンルームの中で拡散することを防止するためです。
クリーンルームにはマスクを着用して入室しますので、そのままくしゃみ・咳をしても大丈夫です。ただ、マスクを取ることは禁止です。
ネックレスやブレスレッドなど、クリーンスーツの中になるものは、着用していても問題ないと思います。ただ、大きな指輪などは手袋を着用する関係でNGかも知れません。
クリーンルームの管理
クリーンルームのキレイな状態を維持できているか?クリーンルームで作っている製品が問題ないか?を確認するための管理があります。
温度・湿度
一般的には、一定の範囲内で管理されていると思います。半導体を作っている工場では、温度:20~28度、湿度:30~70%くらいかと。
数字だけ見ると夏でも冬でも一定の温度なので、快適に見えますが、最近、省エネの関係で、温度を高めに設定している工場が多いかも知れません。(27℃設定とか)
密閉されたクリーンスーツを着て作業すると、体感温度が30℃を超えます。よくTwitterとかで、クリーンルームが暑い!と見るのはこのためです。
クリーン度(清浄度)
クリーンルームがキレイな状態であるかを専用の測定器で測ります。ダストカウンターと呼ばれるものです。
測定は機械が自動的に行なってくれますが、注意するポイントは測定器の単位です。
クリーン度の規格は2種類(FED規格とISO規格)あって、基準となる空間の単位が違います。フィート(ft)とメートル(m)、体積にするとキュービックフィート(cf)と立法メートル(m3)
単位と規格を間違えると正しく評価できませんので、ダストカウンターの測定単位とクリーンルームがどちらの規格になっているかを確認して、合わせましょう。
慣れないと抵抗のあるクリーンルームですが、少しでもイメージに役立てばと思います。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。^^