- 現場で品質トラブルが発生した!
- 納品した製品が壊れてクレームの連絡があった!
そんなとき原因を調べるために、なぜなぜ分析ってすることがありますよね。。
特に人のミス(ヒューマンエラー)が関係するような事故だと、必ずなぜなぜ分析を報告書に入れてると思います。
でも、なぜなぜ分析をしたことがある人は
なぜなぜ分析って、難しいなぁ・・
って思ったことありますよね(^^;
僕も何十回となぜなぜ分析をしてきましたが、うまくいった試しがありません。
なんで、うまく行かないの?
とあるドラマの名言です。
会議室にみんなが集まって、なぜなぜ分析のシートを見ながら知恵を出し合っても、なぜなぜシートは埋まりません。
現場で起こったことを知らないと真因にたどり着けないからです。だいたい言葉遊びで終わります。
この記事では、なぜなぜ分析の具体的な方法を解説します。この記事を読んで頂くことで、原因究明の第一歩が踏み出せます。
- なぜなぜ分析の作り方で悩んでいる人
- これからなぜなぜ分析をしようとしている人
なぜなぜ分析は難しい?
なぜなぜ分析は、かなり難しいです。作る人にセンスが求められ、分析する人の力量に大きく左右されます。
同じ人が分析したとしても、同じシートは作れないと思います。
よくなぜなぜ5回と言われますが、前の文章のどこをなぜにするかはセンス(経験とひらめき)です。間違ったところにフォーカスすると間違った方向に進んでいきます。
えっ、じゃあなんでするの?
報告書になぜなぜ分析があると、それを見た人には原因調査をちゃんとやってる感が伝わります。うわべの原因に対して、深掘りを繰り返し、真因にたどり着き、真因を対策した感じがします。
だから「なぜなぜ分析シートを報告書に入れろ!」という要求が絶えません。
でも、大切なことは、なぜなぜ分析シートを埋めることではなく、原因を深掘りして真因を見つけ、対策すること。
事故に対する真因にたどり着ければ、分析の方法は何でもいいはずです。
少し具体的な例を考えてみます
なぜ、材料AとBを間違ったのか?をなぜなぜ分析してみます。
なぜなぜ分析の一般的なフォーマット
事故:製品が機能しない
事故の原因 | なぜ1 | なぜ2 | なぜ3 | なぜ4 | なぜ5 | 真因 | 対策 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
材料Aと材料Bを間違って使った | |||||||
なぜ1の箇所を埋めようとした場合、「なぜ、材料を間違った?」の答えを書こうとします。
その場合、なぜの答えは幾つか考えられます。
- 材料を選び間違った
- 材料の名前を見ていなかった
- 材料をAと思い込んでいた
会議室では、いろんな要因があがると思います。でも、どれが正解かは現場に行かないと分かりません。
なぜなぜ分析をする時にしてはいけない事があります。それは、推論・推察・推測をしないことです。
事実だけを書いていかないと、実際起こった事故に繋がっていきません。
結果、このなぜなぜ分析シートを会議室で埋めることに意味はありません。
なぜなぜ分析の効率的なやり方
なぜなぜ分析シートは、一旦あと回しにして、具体的な方法を説明します。
6つのステップで真因を究明していきます。
- 現場で起こったことを正確に把握する
- ヒアリングする
- ヒアリングの結果に「なぜ?」をする
- なぜ、そうなったのか?を考える
- なぜ?の答えを対策する
- なぜなぜ分析シートに当てはめる
それぞれ解説します。
事故が起こった一連の作業を1つずつ書き出します。
材料を交換した作業者の動き
STEP | 作業の内容 |
---|---|
① | 材料Aを取りに保管棚へ行く |
② | 材料Aの名前が書かれたシートを見る |
③ | 保管棚で材料Aを探す |
④ | 材料Aを選ぶ |
⑤ | 材料Aを台車に乗せる |
⑥ | 台車で運搬する |
⑦ | 使用済みの材料を取り外す |
⑧ | 取り付ける材料Aの名前を確認する |
⑨ | 材料を取り付ける |
ここでは、どんな動きをしたのかを現場で確認しながら1つ1つ作業を振り返ります。
振り返ることで、どこが悪かったかが分かってきます。
作業ステップ | ヒアリング結果でわかった事 |
---|---|
①材料Aを取りに保管棚へ行く | 問題なし |
②材料Aの名前が書かれたシートを見る | 材料の名前を見て、材料のラベルが赤いことが頭に浮かんだ |
③保管棚で材料Aを探す | 赤いラベルの材料を探していた |
④材料Aを選ぶ | 材料Aの隣に材料Bがあった |
材料Bも赤いラベルだった | |
赤いラベルの材料Bを選んだ | |
⑤材料Aを台車に乗せる | 材料Bを台車に乗せる |
⑥台車で運搬する | 問題なし |
⑦使用済みの材料を取り外す | 問題なし |
⑧取り付ける材料Aの名前を確認する | 材料Bの名前を見た気はするけど、違うことに気付かなかった |
⑨材料を取り付ける | 問題なし |
間違っていた作業に、「なぜ?」の欄を追加します。
作業ステップ | ヒアリング結果でわかった事 | なぜ? |
---|---|---|
①材料Aを取りに保管棚へ行く | 問題なし | ー |
②材料Aの名前が書かれたシートを見る | 材料の名前を見て、材料のラベルが赤いことが頭に浮かんだ | なぜ、ラベルが赤いと思ったのか? |
③保管棚で材料Aを探す | 赤いラベルの材料を探していた | なぜ、ラベルの色で探したのか? |
④材料Aを選ぶ | 材料Aの隣に材料Bがあった | なぜ、隣同士に置いていたのか? |
材料Bも赤いラベルだった | なぜ、材料AとBは同じラベルの色なのか? | |
赤いラベルの材料Bを選んだ | なぜ、材料Bを選んだのか? | |
⑤材料Aを台車に乗せる | 材料Bを台車に乗せる | なぜ、材料Bを乗せたのか? |
⑥台車で運搬する | 問題なし | ー |
⑦使用済みの材料を取り外す | 問題なし | ー |
⑧取り付ける材料Aの名前を確認する | 材料Bの名前を見た気はするけど、違うことに気付かなかった | なぜ、名前が違うのに気付かなかったのか? |
⑨材料を取り付ける | 問題なし | ー |
なぜ?になった理由を書き足します。ここもヒアリングと現場検証で分かってくると思います。
作業の内容 | ヒアリング結果でわかった事 | なぜ? | なぜ?の答え |
---|---|---|---|
①材料Aを取りに保管棚へ行く | 問題なし | ー | ー |
②材料Aの名前が書かれたシートを見る | 材料の名前を見て、材料のラベルが赤いことが頭に浮かんだ | なぜ、ラベルが赤いと思ったのか? | 過去に材料Aを運んだ経験で 覚えていた |
③保管棚で材料Aを探す | 赤いラベルの材料を探していた | なぜ、ラベルの色で探したのか? | 色の方が探しやすかった |
④材料Aを選ぶ | 材料Aの隣に材料Bがあった | なぜ、隣同士に置いていたのか? | 特に考えて配置していなかった |
材料Bも赤いラベルだった | なぜ、材料AとBは同じラベルの 色なのか? | ラベルの色を指定していなかった | |
赤いラベルの材料Bを選んだ | なぜ、材料Bを選んだのか? | 材料Aだと思い込んでいた | |
⑤材料Aを台車に乗せる | 材料Bを台車に乗せる | なぜ、材料Bを乗せたのか? | 材料Aだと思い込んでいた |
⑥台車で運搬する | 問題なし | ー | ー |
⑦使用済みの材料を取り外す | 問題なし | ー | ー |
⑧取り付ける材料Aの名前を確認する | 材料Bの名前を見た気はするけど、違うことに気付かなかった | なぜ、名前が違うのに気付かなかったのか? | 自分の記憶にある名前と見たものが同じか照合した |
⑨材料を取り付ける | 問題なし | ー | ー |
なぜ?の答えが真因の種になります。真因の種を1つ1つ対策することで再発を防止できます。
作業の内容 | ヒアリング結果でわかった事 | なぜ? | なぜ?の答え | 答えの対策 |
---|---|---|---|---|
①材料Aを取りに保管棚へ行く | 問題なし | ー | ー | ー |
②材料Aの名前が書かれたシートを見る | 材料の名前を見て、材料のラベルが赤いことが頭に浮かんだ | なぜ、ラベルが赤いと思ったのか? | 過去に材料Aを運んだ経験で 覚えていた | 記憶に頼らないように、シートに材料の色も印刷する |
③保管棚で材料Aを探す | 赤いラベルの材料を探していた | なぜ、ラベルの色で探したのか? | 色の方が探しやすかった | 色でも探せるようにする |
④材料Aを選ぶ | 材料Aの隣に材料Bがあった | なぜ、隣同士に置いていたのか? | 特に考えて配置していなかった | 材料置き場に表示をして、仕切りを付ける |
材料Bも赤いラベルだった | なぜ、材料AとBは同じラベルの色なのか? | ラベルの色を指定していなかった | 材料ごとにラベルの色を変更する | |
赤いラベルの材料Bを選んだ | なぜ、材料Bを選んだのか? | 材料Aだと思い込んでいた | 材料を選んだ後にバーコード照合を行う | |
⑤材料Aを台車に乗せる | 材料Bを台車に乗せる | なぜ、材料Bを乗せたのか? | 材料Aだと思い込んでいた | ↑の対策でOK |
⑥台車で運搬する | 問題なし | ー | ー | ー |
⑦使用済みの材料を取り外す | 問題なし | ー | ー | ー |
⑧取り付ける材料Aの名前を確認する | 材料Bの名前を見た気はするけど、違うことに気付かなかった | なぜ、名前が違うのに気付かなかったのか? | 自分の記憶にある名前と見たものが同じか照合した | 使用する前にバーコード照合を行う |
⑨材料を取り付ける | 問題なし | ー | ー | ー |
なぜなぜ分析シートを埋めるキーワードは全て揃っています。あとは体裁を整えつつ、足りない部分を補いつつ、シートを埋めていきます。
事故:製品が機能しない
事故の原因 | なぜ1 | なぜ2 | なぜ3 | なぜ4 | なぜ5 | 真因 | 対策 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
材料Aと材料Bを間違って使った | 材料Aを探す時にラベルが赤いことが頭に浮かんだ | 赤いラベルの材料を探していた | 材料Aの隣に材料Bがあった | 材料AとBは同じラベルの色だった | ー | ラベルの色は指定されていなかった | 材料ごとにラベルの色を変更する |
使用する前に材料が違うことに気付かなかった | 材料のシートを見ていなかった | 自分の記憶にある名前と見たものを照合した | 材料の名前を1文字ずつ確認することが大変だった | ー | 人に頼った材料の照合作業だった | バーコード照合へ変更 |
これで、なぜなぜ分析シートの完成です。
なぜ5まで埋めなくても問題ありません。人によって、文書の前後は変わると思います。これはセンスです・・・。
やっぱり難しいですね(^^;
なぜなぜ分析に関する書籍は少ないですが、参考になる本を紹介しておきます。
下の書籍は、Kindle unlimitedに加入している人なら無料で読めますので、ちらっと読んでおくと実践で役立ちます。
まだ加入されていない人も、初回30日は無料で利用できますので、試してみて下さい。僕も利用させてもらってます^^
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FMEAがおすすめ
少し余談ですが、作業1つ1つをステップに分解して、どの作業にリスクがあるかを検証するツールにFMEAは最適です。
FMEAは、潜在的な故障(事故)を予防するためのツールと思われているかも知れませんが、原因を追求するツールにも使えます。1つの作業ステップごとにリスクを数値化できるため、どの作業にリスクがあるか分かりやすいです。
FMEAの定義も決めておけば、分析する人によるバラツキも小さくできます。FMEAについては、別の記事で解説していますので、そちらも読んで頂けれると嬉しいです。
本記事は以上となります。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました^^