製造業にたずさわった事のある人なら、1度はそう思ったことがあるんじゃないでしょうか。25年ほど、製造現場で仕事をしてますが、よくそんな事を考えます。
当然ですが、「つくる数=生産数」は、お客様のオーダーで決まります。色んな種類の製品や商品があって、さまざまなお客様がいるので、当然毎月のオーダー数は違います。
製造ラインの能力(キャパ)をオーバーする月と、そうでない月。この数量をそのまま受け入れるためには、
- 生産するための設備を増やす
- ラインを動かすための人を増やす
この2つが必要です。ただ、翌月には必要なくなってしまう。そのため、会社はなるべく、生産数を均等にしようとします。
では、生産数がこんな見込みだったら、どうでしょうか。
今後も増産の見込みがあるので、設備と従業員を増やす必要がありますよね。
でも、だいたいの企業が考えるのは、今の設備、人で何とかならないか?です。言わば、従業員のがんばりです。
企業は、お金を使いたくないので、いろんな手段を考えます。
- 稼働率を上げる
- 労働時間を増やす
- 休日を減らす
社員のことなんて考えてません。そして、そのがんばりに還元もしません。全て、会社の利益のためです。
バブルが弾けてからの日本企業は、特にこの傾向が強いと感じます。
「会社は利益を追求するためにある!」と言われれば、それまでです。そんな会社に就職した自分が悪い。嫌なら辞めれば良い。と言われれば、それまでです。
そんな正論に疑問を感じてる方に、この中村朱美さんが書かれた『売上を、減らそう。たどりついたのは業務至上主義からの開放』は読んで欲しい1冊です^^
佰食屋理論とは?
1日につくる数を決めることで、従業員の幸福度と、お客様の満足度を、両方あげる考え方だと思います。勝手ながら、本を読んだイメージを図にすると、こんな感じになりました(^^;
- 1日100食しか作らないので、働く時間が決まる
- 残業がないので、早く帰ることができる
- 早く帰ると自分の時間ができる、好きなことができる
- 心に余裕ができる
- お客様のことを考える時間が生まれる
- お客様に気配りをすることができる
- 接客レベルがあがる
- 1日100食しか作らないので、購入数量が決まる
- 材料があまることがない
- 材料を捨てることがない(ロスがない)
- 商品の代金に上乗せする必要がない
- 商品のコストパフォーマンスが良くなる
- お客様の満足度があがる
佰食屋さんは、飲食店ですが、この考え方は、どの製造業でも実現可能じゃないかと思えます。経営者の考え方1つじゃないかと。
でも、そんな会社を僕はこれまで聞いたことがありません。佰食屋さんも、最初からこの営業スタイルだった訳じゃないようです。
従業員のことを考えてきた結果、このスタイルにたどり着いたと思えました。このスタイルにたどり着くまでの苦労も、本の中で書かれてます。
ということは、多くの企業が従業員のことを第一に考えていない!?という事になります。利益至上主義に真っ向から立ち向かう佰食屋さんに深い感銘と衝撃を受けました^^
すいません、佰食屋理論って、僕が勝手に言ってますm(_ _)m
利益を追求しない経営とは?
佰食屋さんは、ステーキ丼という商品を1日100食しか作らない飲食店です。100食限定なので、当然1日の売上は、固定です。
ステーキ丼 | 1,000円 |
---|---|
1日の売上 | 100,000円 |
1ヶ月の売上 | 3,000,000円 |
売上が固定なので、利益を出すためには、売上の中身を圧縮していくしかありません。極限まで、ムダを取り除く必要があります。
材料費 | 30% |
---|---|
人件費 | 30% |
光熱費 | 10% |
広告費 | 5% |
その他費用 | 15% |
残りが利益 | 10% |
(%値はイメージです)
普通の企業なら利益を出すために、材料費、人件費を下げることから考えます。でも、佰食屋理論だと、その逆をいきます。
- 材料費を下げると、商品の質が悪化する → お客様が不満
- 人件費を下げると、従業員の幸福度が悪化する → 従業員が不満
このため、材料費と人件費は削らない。利益を含む、その他の経費を抑える。利益を大きくすることを考えていません。
- 従業員の満足度
- お客様の満足度
- 大きくはないが、安定した利益
利益を大きくし続けるのではなく、少なくても安定した利益を確保する。最低限の利益で、全員の幸福度をあげるビジネスモデルがここにあります。
佰食屋理論のデメリット
良いことばかりのように思えますが、デメリットを考えてみました。
- 魅力がない商品や製品だと成り立たない
- 利益が薄いため、不況に弱い
- 多くのお客様の要望に対応できない
魅力がない商品や製品だと成り立たない
このビジネスもでるは、そもそも売り切れになるような商品や製品力がないと成り立ちません。佰食屋さんのステーキ丼は、魅力があります。
- おいしい
- 見た目もきれい
- コスパが良い
本に載ってる写真が、美味しそうって言ってます^^(食べてみたい・・)
看板商品は、どんなビジネスでも必要ですよね。
利益が薄いため、不況に弱い
毎月の利益が薄いと、企業の資金を貯めることができないので、不況で売上が確保できないときに耐えれない恐れがあります。
バブルやリーマンショックを経験した企業は、これが1番の気がかりなんじゃないかと思います。
できるだけ、資金をストックしときたい気持ちが佰食屋さんのビジネスモデルができない理由なんじゃないかと。
その点は、本の中でも触れられています。そして、その解決策も中村さんは考えられているようです。さすがです^^
多くのお客様の要望に対応できない
作る数が一定ということは、それ以上のお客様の要求には対応できない。お客様が満足しないことになります。
この本の中では、「お客様は神様ではない、従業員と対等です」と言われてます。今の企業は、お客様の要求に全て答えようとします。従業員の要求には答えてくれませんが(^^;
ただ、よくよく考えると、作れなかった要求は、次の日や月に持ち越される気がします。
最初にグラフを載せましたが、商品や製品に魅力があれば、生産数の凸凹をお客様自信で均等にしてくれる力が働くのではないかと思います。欲しい商品ですもんね。
そして、佰食屋のフランチャイズプランを考えているようです。目的は、お客様の要望に答えるためじゃなくて、幸せな人を増やすためのようですが^^
結果的に、いろんな所に佰食屋さんができれば、食べたい人は食べれますよね。僕の住んでる近くにできることを期待!
まとめ
- 従業員のことを第一に考えた結果、
- 決まった数量だけを毎日作ることに。
- 利益を追求しない経営をすることで、
- 従業員とお客様の幸福度をあげる。
- 佰食屋理論は、どのビジネスでも実現可能
- 経営者の考え方1つです。
本を読んでいると、企業経営者がもっと従業員のことを考えないといけない。従業員の声を代弁してくれてる!そんか気持ちでした^^
しかし、最後の数ページで一瞬”はっ!”とさせられます。中村さんの座右の銘は、なかなかに衝撃的でした。
本を読むのは遅い僕ですが、面白い内容に一気に読んでしまいました^^
どんな人でも共感できる1冊だと思います。まだの人は是非読んでみて下さい。おすすめです!